ネパールは、世界で最も開発が難しいといわれる国
美しいヒマラヤ山脈の麓に位置する国、ネパール。
人々は明るく暮らしていますが、実は世界で最も開発が難しい国だと言われています。
その理由は「ないない尽くし」にあります。
もともと山国で自然環境が厳しい上に、約130の民族が共存する多民族国家。
そうした影響もあり、電気・水・海・舗装道路・機能する政府など、発展に必要な要素が「ない」のです。
その結果、最も大きな「ない」が「産業」です。
雇用が生まれない現状から、若い世代が仕事を求めて海外に出稼ぎに行く傾向があります。
2015年の大地震により、さらに海外出稼ぎの流れが加速
そのような傾向の中で、発生した2015年の大地震。
約9000名近い方が犠牲になる未曽有の大災害によって、「家」を失った人が多数いました。
さらに国内では数少ない、雇用されていた人の中では、「仕事」を失った人もいました。
家を建てるには多額のお金が必要なのにも関わらず、そのお金を稼ぐ仕事もない。
その結果、海外に出稼ぎに行く人々がさらに増加。
国の未来を担うはずの若い世代が、国内にいない。
家族を大切にする人々が、その大切な家族と一緒に住めないという社会問題になっています。
実際、ネパールに住んだ2年間の中で、海外へ出稼ぎに行く家族を見送るシーンを何度も目にしてきました。
厳しい現実に直面し、もどかしさを抱えるお父さん。
子どもを見送ることができないくらい、泣き崩れてしまうお母さん。
そのときの光景は、今思い出すだけでも、胸が張り裂けそうになるくらい切ないものでした。
もちろん、海外出稼ぎそのものが悪いことではありません。
海外で働くことで、お金以外に得られるものもたくさんあるのは事実です。
ただ、出稼ぎに行く以外の選択肢がないのは、大きな問題だといえます。
必要とされるのは、農村に住む人々がスモールビジネスを始められる仕組みづくり
海外へ出稼ぎに行く目的は、生活費を稼ぐことだけではありません。
本当の目的は、ネパールに帰ってきてから、自らスモールビジネスを始められるだけの資金をつくること。
牛乳を売るためには、牛がいる。
バイクの整備をするためには、お店や機材がいる。
どんなに小さな事業でも、必ず投資が必要であり、そのためのお金が必要です。
幸いにも、ネパールの農村には協同組合があり、組合が運営する銀行があります。
その銀行から、スモールビジネスを始めるだけの資金を融資することができれば、海外出稼ぎに行く以外の選択肢が生まれます。
ソーシャルリトリートプログラムによって、提供される仕組み
よって、ソーシャルリトリートプログラムを導入することで、左図のような仕組みをつくります。
収益の一部は、滞在にかかる食費など、最低限の生活費として、宿泊先に支給されます。
残りの収益は、村の協同組合が運営する銀行に分配され、銀行から各家庭に融資をします。
一定の期間後、融資を受けた家庭は銀行へ返済し、また次の家庭が融資を受けます。
このような仕組みをつくることで、村全体の豊かさを底上げしていくことを目指します。